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Latest News from Sendai, Tohoku – 仙台 杜の未来舎からの便り

斎藤乾一(70歳、気仙沼市在住)陶板 - 天の川 - 2011年4月から、十年間を区切りとしてスタートしたこの「がんばれ!窯焚き」東北薪窯作家支援の活動も、早くも一年九ヶ月になろうとしております。大震災直後の数ヶ月間はマスメディアの報道のお陰もあり、昨年秋に岩手県の穴窯作家・本間伸一さんを英国にご招待することが出来ました。その後も私なりには、東北の薪窯作家さん達の置かれている苦しい現状を訴えて来た積りなのですが、メディアの関心が薄れるとともに、私の説得力の不足の為か、今年2012年は際立った成果が得られないまま、年の瀬を迎えております。 今回は、仙台市のギャラリー「杜の未来舎」斉藤久夫さんからのメールを紹介して、孤軍奮闘されている様子をお伝えするとともに、被災された現地に留まり、辛抱強く働き続けておられる作陶家の皆様に、心から「がんばれ!窯焚き」と声援をお送り致します。 [G.K.] なかなかご返事さし上げられなくて申し訳ありません。どのように今後組織を継続していけば、作家さんたちにとって良いのか、一人で考えあぐねているうちにご返事が送れてしまいました。11月には仙台で相馬駒焼故15代田代清治右衛門氏と本間伸一氏の展示会を行いました。従来地元相馬市でしか見られない相馬駒焼を、新聞報道もあって仙台に相馬から逃れて来ているファンの方をはじめ多数見に来られました。相馬藩の藩窯としてこの焼物がいかに地元の人に愛され誇りとされてきたか知らされました。しかしながら、東北で元禄からの古型を唯一残している相馬駒焼は継承者の問題からこのままでは途絶えてしまう可能性が強いということを申し上げねばなりません。物的な支援ですむ問題ではないので、またご家庭の事情もあって難しいところですが、今後も何らかのアクションを起こしていかねばと思っております。 同じ11月、四国からは、藤田さんという桃山志野茶碗を焼く80近くの陶芸家が復興の応援の気持ちから来仙し、六幽庵という仙台市営の茶室で展示会を催し自作の茶碗にて来訪者にお茶を振るまわれました。とても良い催しでした。代々お寺さんの家計で幼い時から良いものを見ているのでしょう。25の時に焼かれた井戸茶碗がすでにすばらしいものでした。来年は本間さんの展示会を、この茶室で開催出来ればと思っています。 穴窯、登窯を用いている陶芸家に取っての震災後の状況はますます厳しくなっています。福島の原発に近いところに住む陶芸家はこのまま地元の薪や土を使ったらいいかどうかで意見が分かれ、事故前の備蓄がなくなった時点で、薪窯を断念する陶芸家が大多数になるでしょう。それでなくても伝統的な日本陶器の需要は、主なファン層の老齢化が急速に進み、和の器の背景となっている畳の暮らしが消えていく中でどんどん少なくなっています。 本間さんのような高いレベルの作品が出来る方でも生活が大変なのですから、他は推して知るべしです。このままでは穴窯を作ってこの道に新たに入って来る若い人も皆無となるかもしれません。 「東北炎の作家復興支援プロジェクト」の今後の展開は、1.東北にも受け継がれて来た日本陶芸の伝統を残していく、2.時代や生活環境に合わせた商品の開発、との2方向から進めていくことにしております。 1では、具体的に本間さんなど伝統に基づいて作品を作っている個人の作家、堤焼、会津本郷焼など歴史ある窯を応援していくことになります。 2については、これから陶芸で生活していかなければならない30代ぐらいの若い作家さんに、アドバイスをさしあげながら、他のカテゴリーの作家とのコラボレーションを通して商品化の道を探っています。実際にガーデンデザイナー(矢野TEA氏)とのコラボで、「座景」というコンセプトで植木鉢を作成したり、日本茶発祥の地宇治田原町の生産者と共同で高級宇治茶(生産者も四苦八苦しているのです)をおいしく呑むためのキットに収める器セットの制作を依頼したり しています。開発しましたら1セットおおくりしますのでお試し下さい。 困難なのは1のような東北に日本陶芸の独自性を後世に残していくための基準点となる作家や窯を残していくための活動です。桃山陶器に代表されるすばらしい日本陶器の価値を教え、奥深い理解を育てるための地道な啓蒙活動を続けていく必要がありますが、そうするために は行政や民間など幅広い資金的な面も含めて援助が必要とされています。しかし、マイナーな分野なので思うようにいきません。震災以後始めたこの組織は、以上の主旨を呈して、徐々に運営の主体は作家にゆずって、新しい時代に対応したギルドあるいは組合組織に変えていく必要があると思っております。とりわけ若い作家にはそれが必要な状況になっていると思っています。イギリスは、伝統保存に積極的な国かと思いますが、組織運営のより良い方法、事例があればお教えください。 従来の芸術協会など、実際に陶芸で生活を立てている陶芸家ではなく学校(大学)の先生が中心で、その人たちの利権で動くような組織にはしたくないのです。 薪窯で焼いている評価の高い東北の作家さんの窯を今後時間をつくって継続的にたずねて見たいと思っています。もし、可能であればそのレポートを写真とともに‘Kamataki-Aid‘ のサイトに投稿したいと思っていますが、いかがでしょうか。 今年の冬は、例年より寒くなりそうです。英国も厳しい季節を迎えるかと思いますが、なにとぞご自愛ください。 杜の未来舎 斎藤久夫

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